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海上自衛隊 遠洋練習航海部隊
インドネシア 英雄墓地に献花

残留日本兵の墓を参拝する加藤均 堺国際交流協会理事長ら (左より川榮治元海幕長、 岡見雅行さわゆき艦長、加藤均理事長、 徳丸伸一司令官、 サントソ衛籐会長、インドネシア国軍士官、 中尾博孝かしま艦長、 佐藤誠やまぎり艦長)
残留日本兵の墓を参拝する加藤均 堺国際交流協会理事長ら (左より川榮治元海幕長、 岡見雅行さわゆき艦長、加藤均理事長、 徳丸伸一司令官、 サントソ衛籐会長、インドネシア国軍士官、 中尾博孝かしま艦長、 佐藤誠やまぎり艦長)

堺国際交流協会加藤均理事長が主催

 堺を拠点にアジア各国を始め世界の国々とのネットワークの構築を進める特定非営利活動法人 堺国際交流協会 (堺区) の加藤均理事長がインドネシア国営カリバタ英雄墓地を訪れ、 親善のためジャカルタに寄港した海上自衛隊練習艦隊の幹部らの協力のもと献花を行った。
  南ジャカルタにある同墓地には、 インドネシア独立戦争に参加した旧日本兵らが英雄として眠っている。
翻訳されインドネシアでも出版された 『帰還しなかった日本兵』 加藤均著
翻訳されインドネシアでも出版された 『帰還しなかった日本兵』 加藤均著

 潜水艦救難艦 「ちはや」 の後援会会長も務める加藤均理事長は 「帰還しなかった日本兵〜インドネシア残留元日本人兵士の手記を読む」 (発行 文理閣) を平成18年に出版した。
  同書は、 第二次世界大戦後、 インドネシアに残留し独立戦争に参加した日本人兵士の手記を著者が読みながら歴史の流れについて思いを巡らせているもの。
  残留日本人兵士はその功績によりインドネシア政府から勲章を受け、 同国の国籍を取得し、 暮らしたという。 現在も残留日本兵士の互助組織 「福祉友の会」 (1978年設立) が活動を行っている。
  今回、 加藤理事長は練習艦隊の寄港に併せインドネシアを訪問、 自衛隊幹部、 現地の関係者と共にカリバタ英雄墓地を訪れた。
  10月2日、 インドネシア北ジャカルタのタンジュン・プリオク港に入港したのは練習艦 「かしま」、 「やまぎり」、 護衛艦 「さわゆき」。
  同艦隊の入港は幹部自衛官として必要な資質を育成すると共に、 訪問国の人々との親善を目的とした世界一周の遠洋航海の一環で、 インドネシアへの寄港は13回目、 ジャカルタへは9回目となった。 航海中には防火、 防水訓練など様々な訓練を行っている。
  3日の朝、 献花を行ったのは加藤均理事長のほか、 艦隊司令官 徳丸伸一海将補、 各艦艦長、 先任伍長、 初任幹部、 サントソ衛籐 福祉友の会発起人会長、 元日本兵の宮原永治氏、 インドネシア国軍士官ら約200人。
  サントソ衛籐会長は 「今回の正式な形での献花により本当の意味での 『終戦』 を迎えることができたという思いです」 と感謝の言葉を述べた。
  寄港中、 「やまぎり」 と 「さわゆき」 の一般公開が行われ、 多くの現地滞在の日本人、 インドネシア人が訪れた。
  加藤均理事長は 「インドネシアのために尽くされた方々の努力が礎になり、 両国の平和が保たれ、 堺とインドネシアとの友好関係が発展していると思う。 残留日本兵の貢献を胸に刻み、 今後も両国の交流に取り組んでいきたい」 と話した。




社説

尖閣映像流出事件を巡って
-情報というものを考える-

 尖閣諸島沖での中国漁船の衝突のビデオ映像流出事件を巡って、 さまざまな意見が交錯している。 ことに、 神戸海上保安部の海上保安官が、 自分が流出させたと名乗り出た結果、 ますます激しくなって来た。
  東京地検と警視庁は、 海上保安庁の告発を受けて、 国家公務員による守秘義務違反の疑いで捜査を行っている。 目下の段階では、 任意捜査の可能性を含めて、 逮捕の可否を検討しているという。
  本稿が刊行されるまでには、 何らかの結論が出されていると思うが、 現在のところでは予断を許さない。 それほどまでに、 この問題については、 法的にも、 また、 世論の動向でも意見の激しい対立が見られる。
  法的には、 この流出が保安官の守秘義務違反に該当するかどうか、 が問われている。 保安官のいうところでは、 ある段階まではこの映像が職場で誰でも見ることが出来る状態にあったし、 すでに国会議員の一部に公開されていたことから、 守秘すべき国家機密であるかどうか疑わしいという。
  また、 公務執行妨害で逮捕された中国漁船の船長が、 すでに処分保留のまま釈放されており、 事実上公判の実施は不可能となっている。 このような状況の下で、 裁判上もこの映像を秘匿する必要がどこにあるのかといった問題が提起されている。
  これらの法的問題については、 学者、 検察幹部などの間でも見解が分れている。 昭和52年の最高裁の判決に示されている、 国家公務員の守秘義務の対象としてこのテレビ映像を扱うのには無理がある、 という意見も強いようである。
  さらに、 世論の動向は厳しく、 共同通信社の調査によれば、 国民の88%が公開を望んでおり、 国民の知る権利が強く主張されている。
  一方では、 菅首相の曖昧な逃げの姿勢、 仙谷官房長官の詭弁に満ちた三百代言的に言動に対する世論の対応は厳しい。 今回の問題が菅政権の失政によるものとし、 政権の無責任さと頼りなさに失望と怒りを表明している。
  こうしたことが、 この問題の混迷を深めているが、 最後に、 筆者の専門の立場から附言しておきたい。 情報は、 一人の人間が利用していれば他の人間が利用出来ないものではなく、 経済学でいうところの公共財に類する性格を持つ。 多くの人たちが同時に利用出来るもので、 むしろ公開によって価値が高まる。
  反面、 その種類にもよるが、 公開されることによって効用が逓減するような性格もあり、 情報は極めて複雑な存在であるとされる。 情報は、 本質的に秘匿が困難で、 やがて広く流布されるもので、 中国の天安門事件やソビエトの東欧圏の崩壊のように強い影響を及ぼすことを認識する必要があるのである。
生  田  正  輝 (慶応義塾大学名誉教授)