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英語講座が開かれている大学は、 夜というのに多くの教室に明かりが灯り、 賑やかな雰囲気だ。 僧侶に導かれて教室に入ると、 そこには20人程の学生が座っている。
好奇の目がいっせいにぼくに向けられる。 サンダル履きにTシャツのぼくは、 それだけで気が引け、 先生が来てこの軽装に呆れられたらどうしようか。
いや、 怒られるかもしれない、 などと心配になっている。 ぼくを連れてきた二人の僧侶のうち一人が、 教室の外で先生を待ち受けことの次第を説明している様子。 まだ若い先生は元気よくぼくに近寄ると流暢な英語で挨拶をし、 握手を求めてきた。 ああ、 怒られなくてよかった、 と安堵する。 「ちょっと、 寄せていただきました」 とか細い声でぼくは言った。 そこで生徒に挨拶をして帰るつもりだった。 しかし、 先生は行儀よく座る学生に向かって本当にうれしそうに 「皆さん、 今日は特別授業です!カトウ先生の授業を聞きましょう!」 と宣言をした。 「あれ?」 っと思う間もなく、 学生はいっせいに拍手を始めそれは鳴り止みそうにもない。 仕方なく立ち上がったぼくは、 「何をお話ししたらいいか」 などと言いながらも教壇に進み出たのだった。 学生の前に立つとあら不思議、 話したいことがちゃんと頭に浮かんできた。 初めてラオスにやって来て、 人々が親切なことや若い人々のエネルギーを感じる、 などということ伝える。 学生の反応はいいようだ。 調子に乗ったぼくは、 偉そうに、 本当に偉そうに 「学ぶことの素晴らしさ」 について講義を始めていた。 日本を離れ、 いくつかの国に住み、 それぞれの国の言葉を学び、 人々と話し、 文化に触れ、 本を読み、 分からないこと、 知らないことを学んでいきたい、 などと今から考えると恥ずかしくなるようなことを平気で言ったのだ。 それも、 時折英単語などを黒板に書きながら! 先生の方を見ると、 嬉しそうにぼくを見返し、 「もっと、 もっとどうぞ話してください」 という仕草をする。 後になって、 この先生はその日の準備をしていなかったのか、 と思ったりもしたが、 とにかくぼくは先生のお言葉に甘え、 何と一時間以上も熱弁をふるってしまった。 その後も、 学生たちはぼくのこれまでの生活のことや日本の経済発展のこと、 教育のこと、 アジアのことなどを熱心に質問してくれた。 ぼくは、 自分の知る限りの全てをこの若者たちに伝えたい、 と神妙な気持ちになり、 あり余るほどの金があれば、 ボランティアでもして、 ラオスで教師になりたい、 とまで思ったのだ。 それをある人に言ったらば、 「お金がなくてもやるのがボランティア精神!」 と言われた。 授業が終わったのは9時を過ぎていたと思う。 若い僧侶は、 満足げで 「明日もお寺に来てください!学校で使っている教科書を見てください!」 と言う。 さっきから心の中に芽生え始めた 「何かの役に立ちたい」 との考えに押されてぼくは、 また次の日もお寺を訪ねることにした。 しかし、 その夜からだ。 ぼくの旅の経験の中で最も肉体的な危機が襲ってきたのは。 腹がおかしい!英語の授業の時から胃が重かったのだが、 その重みは食欲不振となり、 やがて見事なほどの腹痛、 そしてトイレから1分たりとも離れられない状況に陥ったのだ。 トイレで苦しみながら考えた。 「偉そうなことを言った罰か?」 「いや、 そんなことはない。 何だろう…ビエン・ティエンで最初に食べたサンドイッチ!あれに違いない!」 誇張ではなく、 一晩中ぼくはベッドとトイレを何十回となく往復し、 枕を抱きしめながら唸っていた。 翌朝、 ぼくはそれでも眺めたかったメコン河と有名な寺を訪ねるため、 ホテルのトイレから失敬したトイレットベーパーを鞄に入れて町に出た。 しかしながら、 メコン河のほとりにはほんの1分間佇み、 写真を撮っておしまい。 寺では仏像を見たらそのままトイレに直行。 悲惨な日となった。 それでも、 弱った体に鞭打って昨日の僧侶の寺に行く。 約束は破れない、 とつぶやきながらトイレットペーパーをしっかりと握り締めて。 学校から帰ったあの二人の僧侶はぼくを部屋に案内してくれて、 学校のことなどを話してくれた。 しかし、 その途中にもぼくはトイレに駆け込まなければならず、 外から 「大丈夫ですか〜?」 と叫ばれる始末。 ラオスでしたことは、 本当に少ない。 訪ねた場所も少ない。 しかし、 なぜだろう、 タイへ帰るバスの中で、 ぼくはちょっと腹具合を気にしながらも、 和やかで、 さわやかな充実した時を過ごしたと感じたのだった。 ラオスの料理も食べず、 土産などは一切買わず。 残りわずかになった (大げさに言えば、 ぼくを守り続けた) トイレットペーパーだけが鞄に残されていた。 それが、 ぼくの唯一のラオス土産である。 |
NPO法人 堺国際交流協会 |
菅原神社 月洲神社 田守神社 |
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南大阪を代表する市民オーケストラ、 堺フィルハーモニー交響楽団のスプリングコンサートが13年ぶりにソフィア堺で公演。 |
『ギターによる弾き語り |
紅梅・白梅教室作品展 |
平成十八年分の所得税確定申告が目前にせまってきたが、 申告が集中するのを避けるために当局においては、 日曜開庁、 申告作成コーナーの充実、
国税電子申告、 納税システム (e−TAX) の利便向上など、 さまざまな施策がとられている。 しかし、 申告期限終了間際になって納税者が税務署へドット押し寄せる光景が相変らず毎年見られるのが現状である。
そこで、 慎重なる人でも慌てるとミスをするのが人間である。 申告書の作成段階においても同様なことが言えるのではなかろうか!!。 そこで誤った数字を記載して本来より多い税金を支払った場合には救済措置がある。
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税理士 大西 正芳 |