アメリカから直ぐにインドネシアに赴き一年。 ぼくの外国暮らしも二年目に入った1992年のこと。 8月に始まり、 6月に終わるインターナショナルスクールの一年が終わろうとしていた。
あと少しで二ヶ月に及ぶ休みに入る。 この休みの直前は、 学年末試験とその採点、 成績のコンピューターへの入力などと目が廻るような忙しさになる。
しかし、 それが終われば、 長期休暇。 教師たちはそれぞれの国へ帰るべく、 航空券を予約したり旅行の計画を立てたりと、 忙殺されながらもウキウキした気分になるのだ。 ぼくもインドネシアでの生活に疲れ果てていたし、 教科書の選定からカリキュラムの建て直しまで担当して、 休みが待ち遠しくて仕方がなかった。 学年末試験が終わり、 後は来年大学を受験する生徒の推薦状を書き上げればその年の仕事が終わるというある日。 休暇の始まる数日前だった。 学校から帰り、 夕食も終わり、 テラスでお茶を飲み、 夕涼みを楽しんで自室に帰った。 裸足だったぼくは何かを踏みつけた感触にはっとした。 何だ?拾い上げてみると木屑のようだ。 ぼくの右横には、 クロゼットと引き出しが一緒になった扉つき物入れがある。 鍵がかかっているはずの扉が半開きになっている。 近寄って扉を開けると、 引き出しの鍵も無残に壊されている。 ぼくはその時何と言っただろう。 しばらくその引き出しを見つめていたと思う。 確か、 ここには、 パスポート、 労働許可証、 外国人登録証、 そして二人の使用人の休暇中の二ヶ月分の給料、 帰国のために用意していた現金、 日本への航空券を入れていたはず…ない!全て消え失せている!夢か?いや、 部屋では時計は動いており、 窓の外では物売りの声が暢気に響いており、 ぼくは今朝からのできごとを順序立てて思い出すこともできる。 これは現実なのだ。 やられた!泥棒にやられたのだ。 ぼくの家は外からは絶対に侵入できない構造になっている。 外部の者は、 鍵を壊さなければ絶対に入って来ることはできない。 おまけに、 ぼくが学校に行って留守の時にはお手伝いさんと警備員の男が常に家にいる。 脱兎のごとく階段を下り、 玄関の鍵をチェックする。 壊れていない。 寝室のドアの鍵も壊れていない。 答えは明らかだ。 「内部の者の犯行」 ぼくは、 早速二人の使用人を招集した。 お手伝いさんは来て数ヶ月。 それまでは大きな問題を起こさずに働いていたが、 ぼくは正直に言って余り信用していなかった。 留守中に知り合いの人間を家に入れていると、 同僚の警備員から聞いていた。 その警備員は気が弱そうで、 そのお手伝いさんの支配下に置かれていると言ってもいいような影の薄さだった。 真っ青な顔で、 震える声で (恐らくそうだったと思う)、 ぼくは二人の使用人に寝室で見たことを説明した。 二人は驚いたように (演技をして、 とぼくには見えた)、 「何も知りません」 と言うではないか。 「だって、 鍵も壊れていないのに、 一体誰があの部屋に入ることができる?」 わめく様に言うぼくに、 ふとどきにも 「私にもわかりません」 と肩をすくめる二人。 「今日の朝から、 今まで誰か家に入ったか?」 「いいえ」 「だったらどうして、 引き出しの鍵が壊されて、 すべてが無くなっているんだ!」 「わかりません」 このような議論がしばらく続いた後、 ぼくは学校に連絡した。 普通ならここで警察に連絡するところなのだが、 このような問題は警察よりもまず学校へ、 というのがその当時のインターナショナルスクールのやり方だった。 状況を説明すると、 担当者のSさんも 「使用人に間違いがない」 と言う。 取られたものは仕方がない。 とにかくその日はもう遅いので、 明日一番に学校の警備担当者をよこしてくれるという。 「使用人には絶対に外に出ないように言いつけて」 とSさんは言って電話を切った。 この世の全ての不幸を集めたような顔でぼくは、 二人の使用人に言った。 「なぜ、 君たちはぼくを苦しめる?」 しかし、 その時思い出した。 明日までに、 生徒に頼まれた推薦状を書かなければ願書の提出に間に合わない。 ここで二人と押し問答をしている場合ではないのだ。 今から思い出しても、 自分を褒めてやりたくなる。 ぼくはその夜、 半べそをかきながら、 ワープロで推薦状を仕上げたのだった。 この 「泥棒事件」 を友だちに話す時には必ずこの推薦状の部分をしっかりと付け加えるようにしている。 そして、 まさに眠れぬ夜を過ごし朝を待った。 その時は使用人が逃げようが、 消えようがどうでもいいと思っていた。 それほどぼくの絶望は深かったのである。 しかし、 翌朝あに図らんや二人の使用人は、 図々しくも我が家の裏庭でインスタントラーメンなどをすすっていたのである。 (続く) |
NPO法人 堺国際交流協会 |
日時 6月11日(日) 10時〜15時 (魚市場は売り切れ次第終了) 場所 堺魚市場 (堺区栄橋2丁) 堺旧港後背地 (堺区大浜北町3丁) ※南海本線堺駅南口から 徒歩5分 内容 マグロの解体即売 (午前10時、 午前11時・売切れ次第終了)、 海鮮丼 (500円)、 魚・海鮮品の販売、 野菜・果物販売、 がらくた市、 飲食コーナー、 フリーマーケット、 骨董品販売、 ミニステージなど お問い合わせ 同実行委員会 (堺市観光部内)TEL 228−7493 |
社会福祉法人 美原の郷福祉会 知的障害者通所授産施設ワークセンターつつじが主催するイベントが行われる。 |
6月25日(日) 「堺おたび浪漫亭」 |
日時 6月9日(金) |
ファミリープラザ |
消費税は普通原則としては国内での取引については課税の対象となるが、社会政策的配慮等から課税の対象とならない取引もある。それが「非課税取引」である。どのようなものがあるかというと、それには土地とか有価証券の譲渡、社会保険医療等が該当する。 |
税理士 大西 正芳 |