外国で暮らすことは、生まれた場所を離れ家族とも友人とも別れるという意味で旅の究極的な現実化だと思う。しかし、その途中で一休みがある。それは日本に帰省するのではなく、日本の友だちが訪ねてくれる時。これまでどの外国にいても必ずやって来る友人が二人いるが、そのうちの一人が大学時代からの付き合いのYだ。
大学を卒業後、仕事をかわることもなく真面目に働いている彼は比較的休みが長い仕事についているので、夏休みや冬休みを利用してぼくの住んでいる国をよく訪ねてくれたものだ。と過去形で書くのは、今では結婚をして独身時代のように気軽に外国へは行かなくなったから。
今でも思い出すと少し反省もするがそれでも可笑しく素晴らしい旅の思い出がある。あれは、ぼくがジャカルタに住み始めて2年目の12月だった。日本の冬休みを利用してやって来るというYとそれまで行ったことのなかったスマトラ島への旅の計画を立てた。ジャカルタはもちろんのこと、東南アジアへやって来るのも初めてのYはジャカルタの喧騒に圧倒されているようだったが、インドネシアの人力車「ベチャ」を眺めながら自分のこれまでの生活をいささか哲学的に顧みている様子だった。
ジャカルタからスマトラへはフェリーで渡り、そこからはバスと電車で移動することにした。主に利用したのは夜行バス。しかし、インドネシアの夜行バスと聞いて日本のそれを想像するのは大きな間違い。ある程度の設備は整ってはいるが、それらが正常に機能していないことも日常的なのだ。
倹約家のぼくも、その時ばかりは「エグゼクティブクラス」のバスを利用することに異存はなかった。もし、他のクラスのバスだったら本当にYもぼくも旅どころではなく、へとへとに疲れてしまうだろうことを知っていたから。しかし、その最高級クラスのバスとて座席のクッションが破けていたり、窓は汚れで外も見えないくらいの状況を呈していた。
Yはそのような夜行バスに乗り、寝不足に陥り、おまけに腰が痛いと言い始めている。それに加えて、元々神経が細やかな彼は腹具合までおかしくなったと言う。その横で、ぼくは初めて見るスマトラの建築物や景色に、無邪気に感嘆の声をあげてはしゃいでいた。Yと兄弟以上の仲を任じるぼくは、「大丈夫、大丈夫、気のせいだよ」と彼の体調の崩れにも大して気を止めなかった。
そんなぼくにYは、「俺は、一応バケーションで来ているんだよな」と不満気に訴え、何故飛行機を使わないのか、と非難する目で見始めた。しかし、ぼくはこれが旅の醍醐味と主張し、順調にぼくらは北へ向かって行った。あれは、スマトラで最大のトバ湖に向かうバスだった。Yとぼくは指定の座席についたが、Yの座席は背中をつけるとリクライニングがほぼ水平になるほど倒れてしまう。
背中を強くシートにつけなければほぼ垂直に保っているので、夜が来るまではさして問題もなかった。夜になって横を見ると、Yは体を垂直にして寝ている。背中が反り返るような姿勢で、ぼくはそれが可笑しくてたまらない。それでも、しばらくしたら席をかわろうと思っているうちに、しばしまどろんでしまった。目を覚まして横をみると、Yの姿がない。トイレに行ったのかと思ったが、何十分たっても戻ってこない。新しい席を見つけたのだ、とぼくは安心して目を閉じた。
どれほどの時間が経ったのだろうか。トバ湖へもあとわずかという夜明け前、Yが座席に戻ってきた。「違う席を見つけたのかい?」というぼくの問いにYは、「いや、ずっとトイレにいた」と焦燥しきった顔で言った。続けて、「トイレの中のバケツの水、汚くないよな?」と心配そうな表情を見せている。
夜中、焼きイカのように背中が反り返ったように寝ていた、いや眠ろうとしていたYはにわかに腹痛と気分の悪さを覚えトイレに行ったという。しかし、気分の悪さはおさまらず、トイレの壁に何時間ももたれて酔いと戦っていたというのだ。その間、バスが揺れトイレに備え付けられているバケツの水がピチャピチャと跳ね足にかからないように気をつかいながら。
飛行機を使わなかったことを反省はしたが、トイレでの彼の姿を想像すると笑いが止まらなかった。Yはそんな友を薄情者と思っただろうか。それでも、ぼくらのスマトラへの旅は素晴らしいものだった。Yも未だにバスのリクライニングとトイレの水については、恨めしそうに語るが、その表情はとても明るい。
ところで、いつだったかYがぼくに言ったことがある。職場で、今年は休みにインドネシアに行くと言ったら、同僚に「あら、去年はアメリカに行ったでしょ?世界中に友だちがいていいわね」と言われたと。そして、なぜか「同じ友人を訪ねていくのです」とは言えなかったそうである。
インドネシア ナショナル大学客員教授(博士)
加藤 久典
平成元年以来さまざまな国際交流の活動をつづけてきた当協会は改めて平成16年5月28日に特定非営利活動法人(NPO)として認定され1年を経過しました。
特定非営利活動に関する事業
@国際文化交流に関する講演会、懇談会、展覧会、研修会セミナー等の開催及び参加
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国際交流と親善につとめ世界の人々との相互の理解を高めるためより多くの人々の参集をと希っています。
詳細等のお問い合せ、入会申込みは
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卓球入門講座
日時
9月24日(土)〜12月10日(土)
14時30分〜16時30分
(毎週土曜日・全12回)
対象
小学3〜6年生
定員
30人
スポーツ保険料、500円が必要
ドラム入門講座
日時
9月21日(水)〜12月14日(水)
18時30分〜20時30分
(毎週水曜日・全12回)
対象
中学生〜一般
定員
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テキスト代、1200円が必要
各講座の申し込み
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手話入門講座
日時
9月22日(木)〜12月15日(木)
18時30分〜20時30分
(毎週木曜日・全12回)
対象
16歳〜一般
定員
20人
テキスト代、1000円 応募者多数の場合は9日に抽選。定員に満たない場合は、以後先着順。
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9月5・12・19・20・23・26日、10月3日
最近の株式市況が高値更新を続けているが、投資家の方々に朗報を!!
まず、平成13年11月30日から平成14年12月31日迄に取得した上場株式を譲渡する場合に税務上の特例が設けられたのである。それにはまず次の条件をクリアーする必要がある。
まず、前述の期間中に取得した株式を平成15年から16年の2年間保有している株式を平成17年1月1日から平成19年12月31日迄の間に証券会社等の業者を通じて譲渡を委託すれば、その株式の購入価額が1千万円分の譲渡所得が非課税となるというものがこの特例である。
ここで、この対象となる上場株式とはどういうものかというと、定められた期間内に購入もしくは払込みにより取得したもので、しかも取得時に上場株式でなければダメである。この特例を適用する場合には、適用を受ける株式の取得価額を明らかにする書類を添付した「特定上場株式等非課税適用選択申告書」の提出が必要である。
又、この特例は選択によって可能であるので詳細は当局及証券会社で確認して必要な手続をしてミスのないように。
税理士 大西 正芳